AGENDA WORKS PROFILE AWARDS RESEARCH ACCESS
宇城市役所小川支所
Uki City Ogawa Branch Office

2020, 熊本県宇城市

国内初となる市役所支所の郊外ショッピングモールへの移転

 宇城市役所小川支所は、郊外型大規模ショッピングモールを改修し、市役所支所全機能を移転する「国内初」の試みです。
 現在、国内には3,220のショッピングセンターと呼ばれる大型商業施設があり、購買機会が限定される地方小都市では、豊富な品揃やモータリゼーション対応により地域住民の日常生活に不可欠なものとなっています。一方で、建築と事業のセットで整備されてきた公共施設の解体と再編が進行しており、庁舎も例外ではありません。これまでにはない行政機能のありかたも求められています。
 宇城市役所小川支所は、新規建設コスト低減を与件とし「地域住民の利便性と行政サービス向上」「官民共創」「潤いのある地域住民のサードプレイス」「融合可能性検証」を目的として、大型ショッピングモール内(イオンモール宇城)既存施設に移転しました。

庁舎空間のサードプレイスへの拡張

 既存商業施設特有の閉鎖的で無機質かつ環境を改善するため、まず、矩計の全体ボリュームを9つのグリッドに静的にゾーニング。次に、各グリッドの中心に人の流れと呼応する柔らかな光をもたらす円形シリンダーを挿入し、緩やかな領域形成と空間的律動を与えました。さらに、地場産杉材とスチールメッシュによるグラデーション・スクリーンによりエントランスからの奥行感を創出しています。
 フリーアドレス型の支所執務スペース、障碍者支援NPOによるカフェ、子育て支援スペース、官民連携による共創スペース、サテライトオフィスなどは、波紋の重なりのように連なります。
 境界線を越境し施設を横断することで生まれた開放的な共創の場は、シームレスに官民でつくりあげていく協調型空間であり、庁舎整備の新しいありかたを示しています。