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室見団地みらいえ
Muromi Danchi Miraie

2022, 福岡市

建築ではない建築

  「室見団地みらいえ」は、高経年の大規模分譲集合住宅団地(860戸)内で、住民が将来的な建替えを検討するための集会スペースです。
 団地内の建築には区分所有法、建築基準法の一団地認定、管理規約など多くの制限があり、所有権者の合意なしに容易に変更することはできません。そこで、さまざまな制限・制約から開放し、最小の「しかけ」で最大の効果を創出するよう、移動可能な車台(7,200×2,405, 公道走行時積載3.5t以下)をもちいた場を設えました。
 建替えに関わるディスカッションと情報交換の場としてだけでなく、自由な交流、憩い、遊び、演奏、ガーデンオフィスなど、団地内の活動と共振する空間資源として止揚されていくことを意図しています。移動可能な 「仮設性」と場の「固有性」を両立した、制度では定義されない「建築ではない建築」ともいえるでしょう。

共振する質感とディティール

地面から浮いた集会スペースとはいえ、長期間の使用と公共空間としての安全性を考慮し、軽量化を図りながら、ボルトで分解可能な在来木造躯体を、スチール構造の車台に縫っています。
 1長辺で壁量確保し、3辺を半透明の中空ポリカーボネートで包んでいます。内部はやわらかく包み込まれるような質感であると同時に、緑に囲まれる外部にさまざまな活動が滲みだし、滞留を促す額縁舞台とステージのような場となりました。
 COVID-19で世界中に緊張が走る中、身近な居場所で陽光を浴び、風に吹かれ、語らい、人間らしい活き活きとした時間を楽しむことが、社会にとって重要な役割を果たすことが再確認されました。ここでも、団地のすべての人々を包摂し、将来に思いを馳せながら時を過ごすことができる佇まいの獲得を意図しています。