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緒方消化器内科
OGATA gastroenterological clinic

熊本市 2007

ホスピタル・エッジを溶解する

 画像診断を専門とする内科系クリニックである。
 これまで、患者にとっての医療施設とは、病気になってから仕方なく訪問・滞在する場でしかなかった。そこには、社会的・文化的・空間的な「境界」、つまりホスピタル・エッジが存在していた。しかし、これからの医療施設には、都市や自然の中を散策することと同じように、より自由でやわらかな癒しの場としての空間の創出が求められる。

 ここでは、ホスピタル・エッジを溶解するため、「ビルディングタイプの解体」「トータル・インスティテューションからの解放」 「コモンスペースの再構築」を基本コンセプトとし、「医療機能と展示機能の融合」「水平・垂直両開口面による自然・社会との親和性の確保」「ダブルヴォイドによる既存密集集合体との関係性の担保」を実現した。
 敷地は南北に約43m、間口が東西に約15mの逆L字形状である。城下町のグリッドパターン上にあるが、市街地空間は相互に何ら関係なく、動的な土地利用計画が存在する訳でもない。高層ボリュームが屹立し続けることだけが予想される。
 配置は奥行きの深い敷地形状に合致させるため低層でリニアなものとしている。1・2階のヴォリュームを水平にずらすことで創出されたダブルヴォイドは、それぞれ「通り庭」「立体テラス」として機能し、内部空間への光や風の進入を可能とする。さらに垂直に拡張された場合にも、同様の操作で作用する。
 敷地を縦断する長い「通り庭」は、通りからの流れを奥へ奥へとと透過させ、内部からの距離も獲得する。プライベイトな敷地の一部を「通り」としてパブリックへと開放することにより、多様な環境の意味が生み出されるはずである。
 「立体テラス」はこの場に丘ができたと考えて良い。時間をかけ緑化され、都市の小さなランドスケープとなるであろう。

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